腫瘍疾患(脾臓腫瘍)

治療症例

腫瘍疾患(脾臓腫瘍)

脾臓の超音波検査所見患者さんは、12歳齢のシーズーで、数日間食欲がないという事で来院されました。
嘔吐、下痢はありませんでした。

 

【診察・検査】

身体検査では明らかな異常は認められませんでした。
血液検査では軽度の脱水を認めました。
レントゲン検査でも明らかな異常は認められませんでした。
以上の検査でも原因がわからないため飼い主様と相談した結果、腹部の超音波検査をしたところ脾臓に腫瘤(しこり)を認めました。

 

CT検査所見(造影後)

【CT検査】

脾臓腫瘍は75%が悪性である事、悪性であった場合転移しやすい特徴があります。
この症例は隣接する臓器への侵潤・癒着の評価、離れた臓器への転移を確認するために胸部・腹部CT検査を行いました。

 

【診断】

脾臓腫瘤
脾臓には3つの腫瘤が認められ、それぞれの大きさが①3.4cm大②1.5cm大③1.0cm大でした。
腫瘤と周囲組織の境界は明瞭で癒着の可能性は低く、腹部リンパ節の腫大もなく、その他臓器の転移も認められませんでした。

 

摘出した脾臓

【治療】

確定診断、根治的治療を目的として開腹手術による脾臓摘出手術を行いました。

 

【病理検査結果】

3つの腫瘍のうち2つが血管腫(良性腫瘍)1つが初期の軟部組織肉腫(悪性腫瘍)でした。
悪性腫瘍のほうは軽度の異型性を示し、核分裂像はほとんど認められず、どちらも脈管内浸潤は認められませんでした。

 

【経過】

手術翌日より食欲があり経過も良好でしたので3日後には退院となりました。
抜糸後も問題なく経過しています。

 

【考察】

今回、脾臓腫瘍を摘出したことで再発、転移の心配はほとんどなく予後は良好と思われます。
このケースの様に、脾臓腫瘍などは特徴的な症状がなく初期の段階では血液検査、レントゲン検査では異常が認められません。
気づかないうちに進行してしまうと貧血、血栓症、他の臓器への転移など重篤な併発症を起こしてしまいます。
ワンちゃんの死亡原因の1位は癌とされていて、5歳以上の癌罹患率は圧倒的に上がります。
早期発見のために、定期的な健康診断を受けましょう。